「小説を書くとき、どのくらいかかるんですか?」
警察官に、聞かれた。 職務質問。しかも警官2人組、間違いなく、以前も職質してきた人。 同じ街。同じ地区。この街は嫌い。来るとなぜだかこの人たちにひっかかる。 「帽子深くかぶって平日歩いてれば、それはそうとう怪しいから、職務質問は仕方ないし、ジェイは歩いてるだけで普通に目立つよ」仕方ないと周りの意見。 けど、若い警官、この二人、ほんとしつこい。 ベテランらしい歳の警察官が歩いてきても、僕をじっとみてるけど、職務質問させてくれ、とは一度も言われたことがない。でも、この街のこの2人は違う。一度目は、駅の中。 2度目は、駅をでたところ。どちらも急に呼び止めて、かばんを全開し、財布の中、隅々まであけてチェック。「ちょっといい?質問させて」「かばん開けるね」「危ないものもってない?」とか聞きながら。一度目は「芸能人?モデルさん?」とも聞かれた(全部これ、本当ですよ)銀行に寄るため持ってた通帳まで開いて見てた警官。何かをはさんでいるのを確かめる風ならわかるけど、あきらかに数字を確認してるだけ、に見えた。これは2度目、僕の名刺を見て驚いたあとで。興味本位?と感じた。 管轄と名前くらい名のって、と思った。けれど、へんにあやしがると署にひっぱられるらしい。ポイントを稼ぎたい警察官もいるだろうし。彼らが、とは言わないけど。 一度目は名刺をたまたま携帯していなかったから「何してる人?」の質問に対し、「出版関係ですね」とだけ答えた。 もちろん、何も変なものは持っていないから、散々バックひっくりかえされたあと、開放。けど、その間、周りの人からは何があったのかな、とじろじろ見られ続けた。 2度目もそう。 2回目は「あー、ちょっと!」だ。若い警官、前の二人。身体全身、触られた。ボディチェックします、だった。身体全部なでまわし、ジーンズのポケットも手を突っ込んでひっくり返された。財布の中を調べまくり、外国人登録書の番号と免許書番号で無線確認させてくれ、と。名刺の中の作家の肩書きを片方がみつけ、テレビ局の方の名刺がたくさんでてきたので興味ありげにながめ、それらの質問、はじまった。片方が、無線確認してる間に。 「どうゆうふうに考えるんです?」「どちらにお住まいですか?」「小説を書くのは大変ですよね、きっと」 どうでもいいから、早く開放してと思ってた。 無線確認、何も問題なしとわかり「大丈夫です」だと。あたりまえです。しかも、何が大丈夫?意味不明。 ツグミもフラバで嫌な思いをした。 先日、その2人組の警官が駅で職務質問してるの、また見た。通過駅で僕はしょっちゅう利用するので、偶然とはいえ、驚く話ではない。 どちらかといえば、気の弱そうな学生風の男の子。白ベースの薄いチェックの半袖シャツにジーパン。どこが怪しいの?という印象。彼らが職務質問する相手の判断基準がわからない。その子はかばんひっくりかえされ、顔、真っ赤。まわりの視線を気にして、戸惑ってるのがすぐわかる。はじめての職務質問、だろう。 職質が、社会で必要であることもわかる。 が、それ以上に、少なくともその時点で何もしていない人間を捕まえるときは それなりの礼儀は必要。逆の立場なら、いったい何を思う? 「ちょっといい?質問させて」たぶん僕はあなた方より、10歳くらい年上ですから。大地がいたら、きっと切れてる。 で、最初の質問、どのくらいかかって小説書くかって? それは作家によるでしょう。その作品によるでしょう。 僕の場合、気軽に口にするの無理ですから。原稿用紙に向かう前に、何度も何度も書き込む映像、頭の中で流す。まさに身を削る、くらい一生懸命流す。ものすごく集中し何パターンも流す。作品が、輝くように。読者さんにしっかり伝わる作品になること願い。原稿用紙に向かっても、何度もパターンを書いてみる。まず納得して、誰かに見せる。編集者といえど、僕にとっては何よりまず大切な最初の読者。1グラムも手は抜けない。 フードラバーズはそうして生まれた。 とにかく、書き込むこと。僕はそれしかないと思ってる。 料理は作りこむこと。 料理はひとつのレシピを何度も作って作って作り込んだように、物書きも同じだと 職務質問も繰り返すうちに、一般人の誰に質問するか、的確に鼻が利くように彼らも早く成長を。プロならそこに、身を削れ。 って、ちょいきついけど、ほんとそうだよ。 今度あったら、フラバ読めって渡そうか(鬼) で、職質受ける代わりに、同時に取材させてもらうし(ナイス) では!
by foodlovers
| 2007-11-22 15:01
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Profile
金本J.ノリツグ
1973年三重県生まれ。20歳で料理人を目指し上京。和、フレンチ、イタリアンと幅広く学び、料理研究家として活動を展開。簡単でおいしく、薬膳知識をも生かしたヘルシーなレシピが人気を集め、各局テレビ、雑誌に幅広く登場する。食品企業のレシピ開発や商品開発、公演なども手がける。作家としての処女小説に『FOOD LOVERS』、そこから飛び出した実写版レシピ本として『LOVE in COOK』(いずれもアートン)がある。『LOVE in COOK』では、小説の主人公を著者自らが演じ、作品の世界をビジュアル化した。コンセプト、料理、スタイリングはもちろん、文章、写真表現にいたるまでをセルフ・プロデュースした意欲作となり、今後さらなる幅広い活動が期待されている。 カテゴリ
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